お父さん
父が亡くなりました。
75歳でした。
長年糖尿病を患っていました。
糖尿病は、運動と食事療法でコントロールすれば恐るるに足らないと言われている病気ですが、父は「好きなように食べて死ぬ!」と宣言し、誰の言うことも聞かずに貫き通しました。
その結果、教科書通りに合併症を次々と起こしました。
糖尿病は全身に及ぶ合併症が恐ろしいのです。
それでも生活を改めない父に、怒りを通り越して呆れてしまい、その後は呆れを通り越して思わず感心してしまいそうになりました。
こんな生活が何年も続くわけがないと覚悟していました。
もう体はボロボロで、今年に入ってからは毎月のように入退院を繰り返していました。
「好きなように食べて死ぬ!」と言っていたのに、食欲が落ちてどんどん弱っていきました。
痛みで苦しむ姿を見るのは辛く、荒い息のなか眠る父の手を取ると爪の形が私とそっくりで泣けました。
言葉は悪いですが兄が「よくここまでもったで。すごいで!」と言いました。
私もそう思いました。
思えば私が決めたことに対して、反対されたことはありませんでした。
進学も就職も結婚も。
「あんたの人生だから」と言うだけでした。
あ、ピアスは反対されたのでした。
お酒が大好きで、酒グセが悪いのが少々どころか大いにキズでした。
買い物が大好きで、それもアホほど山のように買うのが大好きで、テーブルの上にそれらを目一杯並べては「どれでも持って帰っていいよ」と笑って言うのでした。
なにひとつ困ることなく毎日のほほんと生活できたのは父のおかげです。
それを私は当たり前だと思い、果たして感謝の気持ちを持っていたのかな。
ちゃんと伝えたことはあったのかな。
お父さん、ごめんね。
お父さん、ありがとう。